発疹と強いかゆみが、良くなったり悪くなったりのゆらぎを繰り返しながら現れるアトピー性皮膚炎。
首や顔、膝、肘などに出やすいですが、ひどくなれば全身に広がることもあります。
アトピー性皮膚炎の人の皮膚というのは、バリア機能が弱まっているので乾燥しています。
ということは、保湿が必要ですよね?
でも、中には、保湿剤はあまり使わない方がいいという考え方もあるようです。
一体保湿するのとしないのと、どちらが正解なんでしょうか?
アトピー性皮膚炎の人は保湿をするべき
昔は、アトピー性皮膚炎の人は保湿をするというのが基本でしたが、ここ十年くらいの間に、保湿するべきではないのではないか、という考え方が出てきたようです。
それは、保湿剤を使っていては、皮膚がもともと持っている保湿機能が、保湿剤に頼りすぎると低下してしまうからという考え方からのようです。
そして、保湿をするとかゆみが増してしまうから、”脱保湿” したい、という人がいるのも事実です。
皮膚の表面近くにある角質細胞の中には、角質細胞の中の水分をしっかりと保ってくれているNMF(天然保湿因子)という物質があります。
そして、角質細胞と角質細胞の間には、セラミドなどの細胞間脂質があり、水分を捕まえてくれています。
さらに、肌の表面には、水分の蒸発を防いでくれる皮脂膜があり、これらの働きによって人の皮膚というのは潤いを保つことが出来ているんです。
しかし、保湿剤をずっと使っていると、細胞間脂質やNMFが本来持っている保湿機能が段々弱っていってしまうから、脱保湿すべきだ、ということみたいですね。
ただ、もちろん自分が持っている保湿機能を向上させられたらそれが一番なんですが、今のところ、一般的な皮膚科治療で細胞間脂質やNMFの保湿機能を改善させることは出来ません。
潤いが保たれず肌が乾燥している状態だと、ブドウ球菌などの細菌感染を合併する危険性があるため、やはり、アトピー性皮膚炎の人は保湿をするべきではないでしょうか。
肌が乾燥しているとどうして細菌感染してしまうのか
肌が乾燥しているということは、肌のバリアである皮脂膜が機能していないということなので、外部の刺激を受けやすく、それによって強いかゆみを感じてしまいます。
痒いと当然掻いてしまいますよね。
掻いた刺激でかゆみが強くなってまた掻いてしまう、ということを繰り返していくうちに、皮膚にたくさん傷が出来てしまい、その傷口から細菌感染してしまいます。
細菌感染を予防するためには、皮膚をしっかりと洗って、キレイに保つことが大切です。
塗り薬や保湿剤なんかを使っているのであれば、洗浄剤を使って特にしっかりと洗わないといけません。
そのように、患部の洗浄というのは、スキンケアの基本なんですね。
患部の洗浄はマスト!
皮膚を掻きむしってしまい傷がたくさんできたところに石鹸の泡なんかが付くのは痛いですよね。
お風呂に入る時、こけて擦りむいた膝にお湯がしみた思い出は、誰にでもあると思うので分かると思います。
お湯だけでも痛いのに、傷口に泡なんかが付いたらそれはつらいです。
そのため、皮膚のストレスをちょっとでも減らしたいと、アトピーの患部をきちんと洗わないで過ごす人も中にはいるようです。
でも、しっかりと洗わないでいると、臭いのある浸出液が出てきたり、細菌感染してしまいます。
細菌感染してしまった時は、まず何よりも、皮膚をキレイに洗うことが大事で、改善しない時は抗生物質を使った治療を行う必要があります。
細菌感染してしまった時にそれを改善させるためにも、そしてアトピーの症状を悪化させないという意味でも、皮膚を洗浄してキレイにしておくということはとても大切なことなんですよ!
乾燥を放っておかないこと!
肌が乾燥しているのを放っておいてしまうと、掻いてしまったときに受ける皮膚のダメージは強くなってしまいます。
それに、乾燥すること自体がかゆみの原因になるということもあります。
乾燥からくるかゆみというのは、保湿することでなくなるので、保湿をして少しでも不快なかゆみを減らしましょう。
保湿剤選びは重要です
保湿剤には色々な種類がありますが、これが優秀でこれはよくない、というものでもありません。
なぜなら、その保湿剤が合うとか合わないという個人差が結構あるからなんです。
他の人がその保湿剤で症状が改善したからといって、自分にも合うとは限らないということです。
アトピーの人にとって、保湿剤は一時的なものではなく、長く付き合っていくものなので、自分に合っていて継続できるものを選びましょう。
数種類を使ったり、季節によって使い分けるという方法もありますよ。
色々な保湿外用薬の良いところ・悪いところ
色々な種類がある保湿外用薬の、良いところと悪いところをまとめています。
具体的に何を使うのかは、皮膚科の先生と相談しながら選んでくださいね。
保湿剤 | 良いところ | 悪いところ |
油脂性軟膏 (ワセリン、プラスチベース、軟膏系) |
・保湿力が高い ・安く手に入る ・刺激が少ない |
・べたつく |
クリーム・ローション (ウレパーツ、ケラチナミンなど) |
・保湿力が高い ・比較的サラッとしてる |
・炎症があると刺激になる |
ヘパリン系 (ヒルドイドクリーム・ローションなど) |
・保湿力が高い ・ベタつかない ・よく伸びる |
・若干ニオイがある |
その他 (ザーネ軟膏、ユベラ軟膏ほか) |
・保湿力は普通 ・ベタつきにくい |
・薬により異なる |
保湿外用薬はどれくらい使うのが正しいの?
だいたい説明書には ”適量を塗って下さい” と書かれていますが、適量って一体どのくらいなの?と疑問に思う人も多いのではないでしょうか?
保湿外用薬の ”適量” というのは、次の二つの方法をだいたいの目安にしてもらえばいいと思います。
フィンガーチップユニット
フィンガーチップユニットとは、チューブの外用薬を使う時において、人差し指の先から第一関節までの量のことをいいます。
この量で、だいたい手のひら2枚分の広さを塗るのが目安になります。
5gのチューブ1本では
5gのチューブを使うとだいたい手のひら20枚分の広さを塗ることが出来ます。
体の部位で説明すると、片方の脚全体で1回約5g、おしりと背中全体で1回約5g、胸から下腹部までの顔と手足を除いた前面で1回約5gくらいです。
外用薬はたっぷりと使うことが大切
ステロイド外用薬を処方されても、”ステロイド” と聞くと、なんか使うの怖いな・・という気持ちから、量を少なめに使ってしまう人が結構多いんです。
しかし、外用薬はしっかりと十分な量を使わなければきちんと効果が出ません。
外用薬や保湿剤を使っているのに効果が出ない、という人の原因多くは、使用量が足りていないことにあるんです。
これでは、外用薬を使っていても症状は抑えられないので、治療が長引いてしまい、いつまでも外用薬を減らすことが出来ません。
炎症やかゆみを抑え、夜も気持ちよく眠ることが出来るようにするには、外用薬はしっかりたっぷりと使うということが重要なようですね。
保湿アイテムの選び方とは?
先ほど、保湿剤は自分に合ったものを選ぶのが大切だということをいったと思いますが、どうやって選ぶのがいいのでしょうか。
アトピーの人が使う肌の保湿アイテムの選び方のポイントを紹介します。
保湿成分をみる
バリア機能と保湿機能が低下してしまっているアトピー性皮膚炎の人の肌にとって、高保湿で肌に優しい保湿成分がきちんと入っているということはとても重要です。
おすすめは、セラミド、コラーゲン、ヒアルロン酸、エラスチンという4つの水溶性保湿成分です。
セラミドは、バリア機能を保つ働きと、水分を捕まえて逃さない保湿効果があります。
セラミドが足りないと角質細胞が崩れてしまいすき間から水分が蒸発し、さらにざらついた肌質になってしまいます。
次のコラーゲンは、肌に弾力とハリを与える働きと、保湿効果、バリア機能を強化する働きがあるので外的刺激にも効果があります。
そしてヒアルロン酸は、細胞と軟骨をつないで守ったり、目の乾燥を防ぐ働きもしていて、体のあらゆるところにあって、肌の潤いを保ってくれている重要な成分です。
ハリのあるみずみずしい肌には欠かせない成分と言えます。
最後のエラスチンは、コラーゲン同士をつなぐ接着剤的な働きをする成分で、たんぱく質の一つです。
肌の弾力とハリを保つのには欠かせない成分です。
上記のような保湿成分が入っている保湿アイテムを選ぶのがいいですね。
低刺激なものを選びましょう
アトピーの人の肌は敏感なので、エタノールやパラベンといたアルコール成分や、界面活性剤など、肌に刺激になるような成分が入っていない物を選ぶようにしましょう。
ただ、気を付けないといけないのが、”無添加” という表示です。
今の日本において、”無添加” というものに対して明確な定義があるわけではなく、各メーカーが独自の考えで表示をしています。
つまり、本当に余計なものが何も入っていないということを意味しているのではなく、防腐剤や合成界面活性剤の内の、何か一つが入っていいない、ということを示しているだけという場合もあるということです。
無添加という言葉だけを見て安心するのではなく、自分の肌にとって負担になり得る成分が入っていないことを確認してから、選ぶようにすることが大切ですね。
パッチテストをする
アトピーの人には、アレルギー体質のタイプと、敏感肌のタイプがいます。
アレルギー体質の人は病院で検査をする必要がありますが、敏感肌のタイプの人が保湿アイテムを選ぶ場合には、自分で簡単なパッチテストをしてみることで判断する、ということも出来るかと思います。
方法は、とても簡単です。
- 保湿アイテムの液を絆創膏のガーゼの部分にに染み込ませるようにしてつける。
- その絆創膏を太ももの内側か二の腕に貼る。
- 48時間後に絆創膏をはがして、かぶれていないか、赤みがないかということを確認する。
その結果、絆創膏を張った部分にかぶれや赤み、かゆみ等があれば、その保湿アイテムはあなたの肌には合わないということが分かります。
まとめ
アトピー性皮膚炎は、強いかゆみや湿疹が繰り返し起こって本当につらいですよね。
医療は日々進歩しており、治療法の常識というのも変わることがあります。
しかし、乾燥肌を放置することで細菌感染のリスクが高まってしまうということは事実であり、今のところ、人の保湿機能そのものを改善させる皮膚科治療はありません。
そのため、アトピー性皮膚炎において、患部の洗浄と保湿というのはセットでしっかりと行う必要があるかと思います。
*アトピーに効果抜群!アレルナイトプラスの実際に試用した効果とは?